姫路・西はりま 地場産業紹介

乾麺

乾麺の歴史

乾麺とは

乾麺とは、小麦粉・そば粉に水や食塩などを加えて練り合わせた後、製麺した生麺を乾燥させ、常温で長期保存できるようにしたものの総称で、乾麺類(機械製乾麺)と手延素麺類(共に半生麺を含む)があります。

乾麺の起源は素麺

乾麺とは

「麺」といえば、関東では蕎麦、関西ではうどんを指すことが多いですが、その歴史の始まりはおよそ1200年前、奈良時代に遣唐使によって中国からもたらされたとされています。それは、素麺の源流と考えられる索餅(さくべい)という食べ物でした。 索餅とは、小麦粉や米粉に塩水を混ぜ、引き延ばして縄のようにより合わせたものだと考えられています。和名を麦縄といいますが、索餅と麦縄の両方の言葉が、奈良時代から鎌倉時代の文献に記されています。また、索餅が索麺(さくめん)、素麺に呼び方が変化したという考えが一般的になり、素麺の起源は索餅だとされてきました。 室町時代には、素麺師という専門職が生まれ、京都には素麺屋が軒を並べていたことが知られています。この室町後期から江戸初期の時代に、素麺の産地として全国に名を轟かせる播州・三輪などの麺づくりが始められたと言われています。また、蕎麦が一般的に食べられるようになったのは江戸時代に入ってからのことで、それまでは、麺といえば素麺やうどんを指していました。 それから長い年月を経て全国各地に生産が広がるとともに、生産地ごとに多くの銘品が生まれ、日本を代表する伝統食品となりました。

西播磨の乾麺産業

西播磨地域と乾麺作り

乾麺(機械製の素麺、うどん、ひやむぎ、蕎麦、ひらめん、干し中華麺などの総称)の製造は、古くから兵庫県の西播磨地域において営まれていた手延素麺作りを端緒とし、明治時代中期辺りから、合理化のための製造の機械化が本格的に進み、全国的に広まりました。 大型量販店が台頭してくる昭和30年代半ばから、乾麺も全国的な流通を迫られ、小規模な生産形態だった家業や生業から、全国流通に耐えられる生産規模を持つメーカーへと近代化する必要が生じました。その結果、有力企業の規模拡大が急速に進み、零細企業は転廃業を余儀なくされることとなりました。 需要の少ない期間に製麺を行い、それを在庫備蓄して需要の最盛期に出荷するという生産形態をとっていましたが、製麺機械の進歩に伴い、近年では年間を通じて操業し、優れた品質と特有の味覚を兼備する「播州の乾麺」として全国的に名声を博すこととなりました。 以来、播州手延素麺とともに全国最大の麺産地を形成し、「兵庫県乾麺協同組合」の組合員の生産した乾麺類は、「兵庫県優良特産品」として全国各地に出荷されています

良質の原材料と風土がもたらした味

機械製麺法は、兵庫県、岡山県に産する粘力に富んだ製麺用の小麦及び瀬戸内沿岸で製造される良質な塩を主な原料としていたこと、乾燥工程に好適な温和な気候、温度と湿度の調和、良質のこね水などの好条件に恵まれて発展してきました。 我が国の麺類の産地は、良質の小麦が採れる地域に多い傾向にあります。現在では、麺の原料である小麦やそば粉はほぼ輸入品に頼り、昔のように原料の違いによる製品の格差はほとんどなくなっていますが、地域色の濃い副原料を加え、味覚や色に特色を持たせるなど、日本各地でそれぞれ地域色豊かな麺類が生産されています。兵庫県では、姫路をはじめとする西播磨地域を中心に、一大生産地を形成しています。

データでみる乾麺産業

主要乾麺の生産県(単位:t)

平成21年 乾麺全体 うどん類 ひやむぎ類 素麺類 日本そば 干し中華
兵庫 33,951 1,723 3,709 25,702 2,559 259
香川 24,090 12,716 2,264 8,784 326 0
長崎 14,910 1,131 21 13,665 19 72
長野 14,478 387 391 680 13,020 1
北海道 11,255 1,917 1,025 1,899 1,332 5,083
茨城 9,759 4,138 1,347 1,439 2,728 106
宮城 7,862 1,960 1,167 3,695 1,033 8
山形 7,708 1,782 1,092 1,205 3,464 164
愛知 6,388 2,276 1,148 2,292 658 14
群馬 5,563 3,344 915 831 216 256
全国 193,422 47,886 18,757 83,416 35,039 8,319

資料:農林水産省「米麦加工食品動態等調査」
注:うどん類、ひやむぎ類およびそうめん類には手延を含む

乾麺類の生産量推移(単位:t)

平成 うどん ひらめん ひやむぎ 素麺 手延べ麺 干し中華 日本そば
10年 248,939
11年 242,047
12年 235,072
13 年 238,510
14年 226,373
15年 230,295
16年 228,428
17 年 220,257
18年 203,264
19年 199,154
20年 202,139
21年 41,753 2,275 15,470 37,419 53,142 8,319 35,039 193,422
22年 43,653 2,737 16,353 42,130 52,811 8,636 36,402 202,715
23 年 43,488 3,420 17,724 50,263 53,758 9,207 31,249 209,109
24年 37,392 3,742 16,985 46,453 59,959 9,543 30,094 204,169
25年 37,479 4,537 17,731 47,616 62,241 9,653 33,919 213,175
26年 36,004 4,640 19,313 45,354 62,984 10,273 34,705 213,273
27年 27,262 4,669 19,916 38,223 58,506 11,648 34,881 195,105
28年 26,160 5,332 18,760 29,492 57,698 13,079 35,203 185,724
29年 25,632 4,523 19,657 27,459 59,819 14,936 34,433 186,472

出典:農林水産省「食品産業動態調査」

乾麺の種類

代表的な乾麺の種類

そうめん そうめん 乾麺の中で、最も細いのが素麺です。原料には、うどんよりややグルテンの多い小麦粉を用います。奈良時代に伝わった索餅が起源と言われており、後に乾麺製法の基となったものです。
うどん うどん 最も生産量が多い麺の一つで、日本を代表する乾麺。切り口で太麺・細麺・丸麺に分かれており、江戸時代には「うんどん」とも呼ばれていました。
そば そば そば粉につなぎとして小麦粉を混ぜ、食塩・水を加えて練り合わせた後、麺状にして乾燥させたものです。そばの歴史は古く、8世紀頃に北方大陸から朝鮮半島を経て日本に渡ったと言われています。
ひやむぎ ひやむぎ 元々はうどんの食べ方として、熱くして食べるのを「あつむぎ」、冷たくして食べるのを「ひやむぎ」と呼んでいました。ひやむぎの名はそのまま後世に伝わり、現在はうどんの細麺よりもさらに細いものとなっています。
パスタ パスタ 小麦粉、水、塩、卵などの材料を混ぜ合わせ、空気を抜くように捏ね上げて作られます。イタリアにおいては、パスタ用の小麦粉はデュラムセモリナ粉のみに限定されています。
ラーメン ラーメン 小麦粉(強力粉)にかん水を使用して作られ、その多くが黄色を特徴とした麺。明から亡命してきた儒学者を招いた水戸光圀が、日本で最初にラーメンを食べた人物と言われています。

JAS規格による分類・太さの比較

乾麺類

小麦粉及びその他の原材料に、食塩や水を加えて練り合わせた後、製麺して乾燥させたものを乾麺類と言います。機械で製麺されるようになってからは、そばを除く干しうどん、干しひらめん、ひやむぎ、そうめんの4種類は、JAS規格では麺の太さによる違いでしかありません。

干しそば
そば粉、または小麦粉及びそば粉を原料として作られたもの
干しうどん
小麦粉を原料として作られたもので、長径を1.7mm以上3.8mm未満、短径を1.0mm以上3.8mm未満に成形したもの
干しひらめん
小麦粉を原料として作られたもので、幅4.5mm以上、厚さ2.0mm未満の帯状に成形したもの。
ひやむぎ
小麦粉を原料として作られたもので、長径1.3mm以上1.7mm未満、短径1.0mm以上1.7mm未満に成形したもの
そうめん
小麦粉を原料として作られたもので、長径及び短径を1.3mm未満に成形したもの。

乾麺類めんの太さ比較

手延べそうめん類

小麦粉を原料とし、これに食塩や水等を加えて練り合わせた後、食用植物油を塗付して縒りをかけながら引き延ばして丸棒状の麺にして乾燥させたもので、製麺の工程において熟成が行われているものを、手延べそうめん類と言います。

手延うどん
直径1.7mm以上の丸棒状に成形したもの。
手延ひやむぎ
直径1.3mm以上1.7mm未満の丸棒状に成形したもの
素麺
直径1.3mm未満の丸棒状に成形したもの。

手延べそうめん類めんの太さ比較

地域色豊かな全国の乾麺

我が国の麺類の産地は、良質の小麦が採れる地域に多い傾向にあります。現在では、麺の原料である小麦やそば粉はほぼ輸入品に頼り、昔のように原料の違いによる製品の格差はほとんどなくなっていますが、地域色の濃い特産物を副原料に加え、味覚や色に特色を持たせるなど、日本各地でそれぞれ地域色豊かな特産品として発展しています。

北海道 乾燥らーめん・十勝そば・ちほくうどん・幌加内そば
東北 青森県 りんごファイバー入りうどん・津軽そば
秋田県 稲庭うどん
岩手県 わんこそば・盛岡冷麺
宮城県 白石温麺
山形県 紅花そば・山形そば・天童そば
福島県 裁そば・磐梯宝そば
関東甲信越 茨城県 常陸秋そば
栃木県 島田うどん
群馬県 上州うどん・おっ切りうどん・水沢うどん
埼玉県 加須うどん・埼京うどん
東京都 更科そば・藪そば
神奈川県 箱根そば
新潟県 十日町そば
長野県 信州そば・戸隠そば
山梨県 ほうとう
東海北陸 静岡県 茶そば
富山県 大門そうめん・氷見うどん
愛知県 きしめん・あいゆうめん
三重県 大矢知ひやむぎ
近畿 奈良県 三輪そうめん
兵庫県 播州そうめん・揖保乃糸・出石そば
中国・四国 岡山県 鴨川うどん
島根県 出雲そば
香川県 讃岐うどん・小豆島そうめん
徳島県 半田そうめん・祖谷そば
九州・沖縄 福岡県 浮羽そうめん
佐賀県 神崎そうめん
長崎県 島原そうめん・五島うどん
熊本県 南関そうめん
沖縄県 沖縄そば

乾麺の原料

小麦粉

麺の主原料は、何と言っても小麦粉です。小麦の知識がなければ、美味しい麺は作れません。美味しい麺を作るには、それぞれの麺に合わせた適切な原料を使用し、適切な製法で作ることが重要です。 小麦は、栽培する季節によって「春小麦」「冬小麦」、粒の色によって「赤小麦」「白小麦」、硬さによって「硬質小麦」「中間質小麦」「軟質小麦」に分けられます。

小麦粉

過去を振り返ると、国産の方が製麺には適していると見られ、国産小麦が使用されてきましたが、米の増産に伴って国産小麦が減産され、輸入小麦(オーストラリア産等)の供給が大幅に増えています。

麺に使う小麦の種類

硬質小麦 中華麺
中間質小麦 乾麺、ゆで麺
デュラム小麦 パスタ

食用油

手延素麺の製造には、「油返し」という工程があります。これは、麺の表面に食用油を塗りながら細く引き延ばしていくことで、「麺表面の乾燥を防ぐこと」、「麺同士の付着を防ぐこと」、「素麺に独特の風味を与えること」を目的とします。
油返しに使用する食用油には、融点・安全性が高く、風味がさっぱりしていて油くさくなく、酸化しにくい綿実油が多く使われます。また、価格も適当であるということも理由のひとつと言えます。

その他の原材料

やまいも、でんぷん、植物たんぱくのほか、風味原料として卵や粉茶、乾燥野菜など、乾麺のJAS規格で使用が認められているその他の原材料を用いることもあります

乾麺の製造工程

機械麺の製造工程

1.混練
小麦粉と食塩水をミキサーで捏ねて、生地を作ります
2.複合
回転する2本のロールの間に生地を入れて、帯状の麺帯にします。
3.熟成
麺をねかせて熟成させます。麺帯をコンベアにおいたまま熟成させたり、麺棒に巻きつけてねかせます。
4.圧延
何回かに分けて麺帯を一定の厚さにします。乾麺の場合は、麺帯を1~2mmほどの厚さに仕上げます
5.切り出し
生地を成形した麺帯を切り出してロールにかけ、千切りにして麺線にします。
6.乾燥
生麺は急速に乾燥させると割れたり折れたりするため、湿度に注意しながら乾燥させます。
7.裁断
麺を一定の長さに裁断し、それぞれの量に取り分けます

製造工程

機械麺の製造工程

1.こね・ねかし・延ばし
生地を作るために、小麦粉と食塩水を捏ねて熟成させます。
その後、踏板の上で足踏みして8mm程の厚さの円盤状になるように延ばします。
2.板切り
包丁か鎌で円盤状の生地に渦巻状に切れ目を入れ、帯状にします。
これを板切り機に何度か通してひも状に延ばします。
3.油返し
ひも状になった生地の表面に食用油を塗り、
縒りをかけて引き延ばしながら木桶の中に渦を巻くように重ねていきます。
4.ねかし・延ばし
3~5時間ほど桶に入れた状態でねかせ、
もう一度油を塗りながら細目機にかけて少しずつ延ばしていきます。
5.かけば
「4」の作業を繰り返し、太さが7~8mmになったら掛け巻き機にかけ、2本の細い竹の棒の間に、ひも状の麺を8の字の形にあやがけして引き延ばします。
6.こびき
あやがけしたものを2つ折りにして室箱でねかせ、
片方の棒を固定したままもう一方を数回引っ張り、細長く引き延ばします。
7.はたがけ
麺をはた(織)にかけて、さばきという大引き(箸わけ)を入れて、
間隔が2mくらいになるまで2本の竹の棒を引き延ばします。
8.天日乾燥
自然乾燥させるために屋外に出し、天日にさらします。
麺の表面の乾燥状態によっては、室内にて調整を行います。
9.切断・結束
箱詰めするために麺を一定の長さに切断し、結束して箱に詰めます。
10やく(厄)
箱詰めしたものは、梅雨期を過ぎるまで倉庫内で保存します。
これが素麺特有の「厄」という熟成で、麺が発熱してより一層水分と小麦粉のなじみが良くなります。

麺の再生処理

乾麺特有の工程として、くず麺の再生処理があります。くず麺は主に裁断で発生するもので、乾燥工程で出る落折れ麺も含まれます。
くず麺は、粉砕機で粉状にするか、水に浸漬するか、粉砕してから浸漬してふやかせる方法が採られます。こうした生地は、新しい生地に混ぜて再生使用されます。

その他乾麺について

7月7日は乾めんデー

乾麺とは

後醍醐天皇の時代(927年)にまとめられた平安時代の法令集「延喜式」によると、索餅(さくべい)は旧暦7月7日の七夕の儀式に供物として用いられ、七夕には欠かせないものとされていました。これは、中国の故事に則り、この日に索餅を食べると疫病にかからないとされていたことによるものです。
さらに、神社由来の食物として縁起が良いものであったため、七夕以外の行事においてもお供物や引出物として、また、保存食として、貴族の間で広く用いられたそうです。
このことから、全国乾麺協同組合連合会では、1982年(昭和57年)から7月7日(七夕)を「乾めんデー」と定め、全国の消費者へのアピール及び消費拡大を図るため、毎年様々な行事を開催しています。

技能検定制度

手延素麺をはじめとした乾麺の製造は、熟練した職人の手作業に大きく依存してきました。技術の進歩に伴って作業の機械化が進む昨今においても、一定レベルの技術が必要とされる状況は変わりません。
しかしながら、少子高齢化が進む中で若い技術者が減少し、人材の確保が困難になっています。こうした状況に対して乾麺製造技能者の技術向上を図るため、国家検定試験制度として技能士検定制度を導入し、昭和58年から機械式乾麺、平成5年からは手延素麺について、それぞれ技能検定が実施されています。

東西で異なる消費傾向

夏場になると、東日本一帯ではひやむぎ、西日本では素麺に消費が集中します。また、素麺やひやむぎを除いた麺の太さでみると、信州・山形などのそば、西日本のうどん、その間の愛知ではきしめんといったように、東では細い麺、西では太い麺、中間の愛知ではその真ん中が好まれてきた傾向があります。しかし、近年では、調理しやすい細い麺の消費が全国的に拡大傾向にあります。

美味しい乾麺のゆで方

1.準備はゆでる前に
乾麺は、ゆでたてが一番です。ゆでる前に、つゆ・薬味・器などをご用意ください。
2.たっぷりのお湯
ゆでる際は、たっぷりのお湯(乾麺100gにつき約1Lが目安)を使用してください。
3.タイマーで時間計測
商品の裏書などにある調理方法をよく読み、タイマーを使用して表示時間通りにゆでてください。
4.洗いは冷たい流水で
ゆで上がった麺を水洗いする時には、流水でよく洗って表面のぬめりを取りながら冷やしてください。冷たい水でよく冷した方が美味しくなります。
5.氷水で冷やす
麺を洗ったあと、氷水につけて麺を引き締めると、一層美味しくなります。
6.早く食べる
ゆで上がった麺は、出来るだけ早くお召し上がりください。時間とともに、麺がのびてコシが弱くなります。

乾麺の保存方法

乾麺は長期間の保存が可能ですので、ご家庭での常備食品としてだけでなく、保存食としてもご利用頂けます。ただし、保存の際は次の点にご注意ください。

1.においの強いもののそばや直射日光を避け、湿度の低い場所で保存してください。
2.一度開封された乾麺は、カビの発生や甲虫類の侵入を防ぐため、密封容器などに入れて保管してください。

各種お問い合わせ先一覧

乾麺の歴史・製品等についての各種お問い合わせ
連絡先団体名:兵庫県乾麺協同組合
所在地:〒670-0926 兵庫県姫路市東駅前町91
TEL:079-288-0018 FAX:079-288-0058
URL:https://www.kanmen.jp